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【ゲーム音楽】The Last of Us 1〜2の音楽解説&キャラが歌った曲について考察

本日は大好きなゲームの音楽について書いていきたいと思います。
そのゲームはこちら、The Last of Us!! 

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Video Game
 

もう夢中になってプレイしました。1も2も。最高のゲームだと思っています。

また、特に、"2"でエリーやジョエルが歌っていた曲については、特別な意味があるように思いますので、その辺りも少しだけ考察していきたいと思います。(考察っていう程のものでもないですが・・・。)

なお、この記事内では、可能な限りクリティカルなネタバレは避けていますが、基本的にはプレイ済みの方向けに書いており、どうしても一部内容に言及せざるを得ない為、未プレイの方はご注意ください。

 

1. The Last of Usとは?

人を凶暴化させる寄生菌が蔓延した世界で、人々のサバイバルを描いた作品

1は、主人公の中年男性ジョエルと少女エリーの2人の旅を軸にした人間ドラマ。人間 vs 寄生菌だけではなく、人間同士も争い合う凄惨な世界で、旅を続けるうちに徐々に2人の絆が築かれていく。まさに映画みたいなゲームで、当時プレイした多くの人に「続編を作る事は不可能」と言われた非常に完成度が高いストーリーでした。


The Last of Us 日本プレミア版トレーラー

しかし、2020年に続編2がリリース。

内容については、賛否両論出ていますが、本題から脱線する上、ネタバレになる為、ここでは詳細には触れません。いずれにせよ、筆者的には圧倒的に今年No.1のゲームでした。感情的に重過ぎて、「最高のゲームだったけど、もう2度とプレイしたくない」と言う謎コメントが出ました。(でも、いつかまたプレイすると思いますが。)

 

The Last of Usが凄いのは、人の感情を激しく揺さぶる、しかも、間違いなく賛否両論が巻き起こるようなストーリーを、プレーヤーの選択に依存せず(つまり、「プレーヤーが自分で選んだ」という自業自得感を与えず)、あえて一本道で展開するところだと思います。The Last of Usマルチエンディングはありません。誰がプレイしても、多少イベントの見落としはあるかも知れませんが、基本的に同じストーリーをなぞるようになっています。映画のように、唯一無二の「本物」である素晴らしいシナリオが一つあるのみなのです。

 

そんなThe Last of Usの雰囲気を形成する最重要要素の一つが音楽です。

 

2. Gustavo Santaolallaの音楽が演出する緊迫感と繊細な感情

The Last of Usシリーズの音楽と言えば、なんと言っても Gustavo Santaolalla(グスターボ・サンタオラヤ) !

Gustavo Santaolallaは、ブローズバックマウンテン(2005年)やバベル(2006年)でアカデミー作曲賞を受賞している映画業界で有名な作曲家です。ゲームに音楽を提供したのはThe Last of Usが初めて。

 

The Last of Usの音楽では、幅広い楽器(一部楽器ですらないものも)が使われていますが、何と言っても印象的なのは、メインテーマの主旋律で使われているロンロコ。(アンデス地方周辺で民族音楽によく使われる弦楽器。)良い音です。

メインテーマは本当に秀逸。ゲーム自体で描かれている、荒廃した、それでいて美しい世界の雰囲気、そして、その中で生きる緊迫感と切なさが見事に表現されており圧巻です。(このサントラが凄く良くて、一時期ヘビロテしてました。)


The Last of Us Music Video

 

また、これが「2」になると、また少し趣が異なります。「2」はゲーム自体が「復讐」の物語であり、音楽もテーマに相応しい重苦しさと、より一層の空虚さ、切なさ、沈鬱さが際立ちます。メインテーマも、メロディこそ同じですが、もはや別の曲。

凄い作曲家ですね・・・。

 

 

3. The Last of Us 2の制作発表トレーラーでエリーが歌った”Through the Valley”

前述した通り、The Last of Us 1をリアルタイムでプレイしたユーザーの多くは、「続編を作る事は不可能」と感じたのではないかと思います。1が完璧だった故に、「続編は、作るにしてもジョエルとエリーの話にはしないで欲しい」と言う声も多く聞かれました。

 

そんな中、2016年12月にPlayStation Experience 2016で2が正式に発表されました。その時のトレーラーがこちらです。(確か作品のテーマが「復讐」になるという事がアナウンスされたのもこの時だったと思います。)

このトレーラー、作品に関する細かいヒントが散りばめられていて、ファンの間で考察談義が盛り上がりました。


The Last of Us Part II - PlayStation Experience 2016: Reveal Trailer | PS4

 

トレーラーでエリーが歌っている曲が、Shawn Jamesの”Through the valley”という曲です。("Shadows"というアルバムに収録されているのですが、アルバム全体がとっても良いので、通しで聴くのがオススメ。ちなみに筆者は8曲目の"If That's Love"っていう曲がお気に入りです。)


Shawn James - "Through the Valley" - Official Music Video

 

このエリーが歌っている部分自体は、どストレートにThe Last of Us 2のストーリーに直結しています。歌詞は下記の通り。

I walk through the valley of the shadow of death
And I'll fear no evil because I'm blind to it all
And my mind and my gun they comfort me
Because I know I'll kill my enemies when they come

<訳>
私は死の影の谷を歩いていく
私は悪を恐れない
だって、何が悪かなんて分からないから
心と銃があればいい
何故なら私は、敵が来たら殺すから

〜中略〜

But I can't walk on the path of the right because I'm wrong.

<訳>
でも、私は正しい道なんて歩けない。何故なら私は間違っているから。

 (出典)Shawn James - "Through the Valley"

The Last of Usは、ゲームの序盤で重要なイベントが発生し、エリーはある敵勢力に強い憎しみを抱く事になります。復讐が正しくない事なんて分かっている、でも敵を殺すしかない・・・そういう感情が表現されている訳です。

そして、この曲、エリーは最後まで歌っていませんが、曲の終わりの歌詞は以下の通り。

But I know when I die my soul is damned

<訳>
でも、私が死んだら、私の魂は地獄行きだ。

(出典)Shawn James - "Through the Valley"

地獄に落ちても良い、どうなっても良い、それでも、エリーは「I'm gonna find, and I'm gonna kill every last one of them.(奴らを見つけて、最後の一人まで残らず殺してやる)」という固い決意を持って旅に出る。それが、The Last of Us 2の「始まり」です。

では、エンディングではどうなるのか?

 

4. The Last of Us 2のエンディングでエリーとジョエルが歌う”Wayfaring stranger”

トレーラーだけではなく、作中でも、登場人物がギターを演奏したり、歌ったりするシーンが複数あって、いくつかの曲が演奏されるのですが、一番最後のエンディングでも、エリーとジョエルが"Wayfaring stranger"というアメリカの宗教歌を歌っています。


Wayfaring Stranger - Ashley Johnson and Troy Baker - PSX 2017 | PS4

(しかし、Ashley Johnson(エリー役)とTroy Baker(ジョエル役)の歌良いですよね。)

 

この歌詞がこちら。

I am a poor wayfaring stranger
While traveling through this world of woe...
Yet there's no sickness toil nor danger
In that bright world to which I go

<訳>

私は貧しい、彷徨える者。
苦難に満ちたこの世界を旅している。
何の病気も、苦難も、危険もない、明るい世界を求めて。


I'm going there to see my father
I'm going there no more to roam
I'm only going over Jordan
I'm only going over home

<訳>
私はそこに父に会いに向かっている。
もう彷徨わなくて良いように。
私はヨルダン川を超え、故郷も捨てていく。

この曲、エリーがとジョエルでは、実は微妙に意味が違うような気がしています。

 

ジョエルの場合は、パンデミックの当初より本当に酷い目にあって(主に1の話)、それこそ苦難と危険の連続の人生を歩んできた訳です。
しかも、実の娘のように愛していたエリーに憎まれる事もあったりして。

それでも、作中の最後の方の回想シーンでエリーの言葉に嬉しそうな表情を見せるジョエルが描かれており、これでやっと彷徨わずに、安らかに休む事ができる・・・そういうニュアンスなのではないでしょうか。

 

一方で、エリーは少し意味合いが異なります。(根本的には共通しているのですが)

新約聖書によると、ヨハネイエス・キリストに洗礼を授けたのがヨルダン川で、ヨハネはこの川のほとりの荒野で人々に「悔い改める事」を促し、洗礼活動を行なっていたとされています。

激しい復讐心に駆られ旅にでたエリーは、作中の最後の戦いで、ある選択をしました。

それにより、憎しみ・復讐する連鎖から離れたのです。

「憎しみという迷走から離れ、本当に大切なものを探す為に、故郷を捨てて旅に出る」

・・・エンディングのラストシーンも踏まえると、エリーの歌はそのように解釈できるのではないでしょうか。

 

あの後のエリーについて、DLCか何かで描かれないかな?と期待している筆者でした。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

大好きなゲームの音楽について書く事ができて楽しかったです。

是非、ご意見・ご感想をコメント頂けますと幸いです。